研究概要 |
1、麻疹ウイルイスに対するモノクロ-ナル抗体を作成した。麻疹ウイルスLEC株で免疫したBALB/Cマウス脾細胞と,ミエロ-マ細胞であるP3・653細胞のハイグリド-マを作成し,BALB/C腹腔内に接種して得た腹水をモノクロ-ナル抗体とした。この抗体の特異性は麻疹ウイルスLEC株を感染させたVero 細胞,麻疹ウイルスSchwarz株をNC37細胞に持続感染させたNCーS細胞を抗原とした蛍光抗体間接法により証明された。 2、麻疹ウイルスNP蛋白をコ-ドする領域のcDNAk,ランダムプライマ-法によりビオチン化UTPkz標識したプロ-ブを用いて,in situ hybridizationを行ない,酵素としてアルカリフォスファタ-ゼ基質1発色源としてBCIP1NBTを使用して発色させ,ウイルス核酸の局在を検索する方法を開発した。 3、これらの方法を用いて,実際の麻疹ウイルス感染症を検討した。 1) 巨細胞肺炎患者剖検肺組織においては,組織の巨細胞に一致して,HA,NP,F,Mの抗体によって特異蛍光が得られ,その抗原の存在様式はin vitroにおけるそれと同様であった。またin situ hybridizatinにより,ウイルスゲノムは核質内に遊離しているよりも,膜構造に近接して存在しているように観察された。 2) SSPE患者剖検脳組織においては,in situ hybridizationにより,核内封入体を有する感染細胞の核内,とくに封入体周囲に強い麻疹ウイルスゲノムによるシグナル発色の集積を認めた。 以上,モノクロ-ナル抗体およびビオチン標試フロ-ブを用いて,麻疹ウイルス抗原並びにウイルス核酸の組織内における局在の検討が可能となった。これらの方法を用いることは,SSPEの発症機構を解明するうえで,重要な手段を提供するものと考えられた。
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