研究概要 |
遺伝子組換え型ヒトGーCSFおよび抗腫瘍剤のMitoxantrone(MIT)のマウス骨髄単球性白血病細胞WEHIー3Bの分化に及ぼす影響についてin vitroにおいて検討し,以下に示すような両者の作用機構の異同および併用効果について知見がえられた.GーCSFによるWEHIー3B細胞の分化誘導はその直接作用ではなく,細胞の増殖が刺激され細胞濃度が高くなることによって,二次的に出現する分化自己誘導の結果であることが判明した.MITによる分化誘導は,分化自己誘導の影響を除外した低細胞濃度においても,その分化誘導作用が観察されることが判明し,GーCSFによる分化誘導とは作用機構が異なり,その直接作用によるものと考えられた、血清の影響を除外した無血清無蛋白の条件下による検討を行ったところ、GーCSF,MITいずれも単独では,WEHIー3B細胞のNBT還元能を誘導することはできなかったが,両者を共培養することにより、著明なNBT還元能が誘導され,また形態学的にも両者併用時に細胞に最終分化がみられることが示され,分化誘導作用機構の異なるこれら2種の分化誘導因子には分化誘導併用効果のみられることが判明した.急性非リンパ性白血病患者由来白血病細胞に対する,MITの分化誘導作用についても検討してところ,FAB分類のM2,M5の由来白血病細胞では,MITによる分化傾向は観察されなかったが,3例のM4(骨髄単球性白血症)患者由来白血病細胞では,MIT添加によりマクロファ-ジ様細胞への分化誘導が認められた,以上よりMITはマウスおよびヒトの骨髄単球性白血病細胞に対して,比較的,普遍性のある分化誘導因子であることと,マウス白血症細胞では,MITと作用機構の異なる分化導因子GーCSFと併用することにより分化誘導増強効果のみられることが明らかにされた.
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