研究概要 |
1.von Willebrand因子(vWf)の血小板膜糖蛋白Ib(GPIb)への結合に関する研究. vWfの血小板膜GPIbへの結合を抑制する2種のモノクロ-ナル抗体(MAb)の性状を研究し,in vitroでvWfのGPIb結合を惹起する2つのモジュレ-タ-,リストセチンおよびボトロセチンの作用機序を検討し,この両者の違いを明らかにした。 次にこのvWfと血小板膜GPIbの結合に関与するとされるAurin Tricarboxylic Acid(ATA)の作用機序をGPIb結合に関与するvWfの2種のMAbを用い研究し,ATAはvWfとGPIbとの結合に特異的に作用し,既に報告したリストセチンを介するvWfの血小板膜GPIbの結合よりボトロセチンを介する結合をより特異的に抑制し(未発表)さらに血液還流実験でATAはvWf作用のより生理的な条件,すなわち血小板と損傷血管壁の間でhigh shear stress(高ずり応力)下での結合を特異的に抑制することを明らかにした。このことはvWfを介する血小板の損傷血管内皮下組織への粘着を抑制する新たな抗血栓剤開発に大きく寄与するものと考えられる。また,この2種のMAbを用いて各種von Willebrand病(vWd)の血漿vWfの構造解析を行ったいる。 2.vWfのコラゲン線維結合能に関する研究. vWfのコラゲン線維への結合様式およびそのvWfのエピト-プについてはフランスおよび教室のMAbを用いて明らかにした。すなわち,その結合はCaイオンに関係せず,容易に混和するだけで結合し,vWf側の結合エピト-プはvWfの最小構成単位(サブユニット)のアミノ酸残基911ー1365の間に存在することを示した。またvWd各種病型でのvWfのコラゲン線維との結合を研究し,そのなかでvWfサブユニットのより重合した高分子vWfがよりコラゲン結合能を示し,vWdでは重合障害がみられるtypeIIA,IICで結合能の低下がみられた。さらに,同程度の重合を示す正常クリオ上清より結合能の低下がみられたことから,これら疾患での異常部位がコラゲン結合部位の近傍かvWf構造変化に伴いコラゲン結合部位の異常をもたらしたものと推定された。 3.vWdのサブユニット構造の解析. vWdのvWfのコラゲン線維の結合能を解析する中で,vWdのvWfサブユニット解析を検討した。従来,vWfのサブユニット解析は血漿vWfを部分純化する必要があり,数mlー数十mlと大量に血漿を必要とした。しかし,還元vWfと反応する抗体の作成によりわずか30μlで分析が可能となった。さらに,従来,報告されていたvWfのサブバンドより,より多くのバンドの分析を可能にした。またこの分析法にてvWd typeI,IIA例でのバンド異常を明らかにした(未発表)。
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