1.末梢血中Fcεレセプタ-陽性細胞数の測定と同定:アトピ-性皮膚炎(AD)、アトピ-素因のない湿疹患者(ED)、健常人の末梢血単核球をFicoll-Hypagueにより単離する。FITC標識H107(モノクロ-ナル抗Fcεレセプタ-抗体)およびPhycoerythrin(PE)標識モノクロ-ナル抗T、B、単球血清(Leuシリ-ズ)を用いて、二重染色しFACScanで陽性細胞のsubset同定と数の測定を行った。重症、中等症ADでは、Fcεレセプタ-(R)陽性細胞は6%前後で、軽症AD、ED、健常人の約2%に比べて有意に増加していた。いづれのグル-プでも陽性細胞はB細胞であったが、重症、中等症ADに限って陽性細胞の約10%がT細胞および単球であった。また、FcεR陽性T細胞の表面形質を検討したところ、CD8陽性細胞の方が、CD4陽性細胞より有意に多かった。これらの結果より、AD皮疹の程度と末梢FcεR陽性細胞の割合は正に相関していると言える。 2.皮疹におけるFcε陽性細胞の動態:ADおよびED患者から得た生検皮疹におけるFcε陽性細胞をH107とモノクロ-ナル抗T、B、単球血清を用いた蛍光抗体二重染色法により、クリオスタットで薄切した切片中で同定し、陽性細胞の浸潤を調べた。AD皮疹のみにFcεR陽性細胞がみられ、急性増悪部では浸潤細胞の約4%、また、慢性苔癬化部では、その%が陽性細胞であった。FcεR陽性細胞の約半数はT細胞で、B細胞はみられなかった。これらのT細胞はCD8優位であった。以上1、2の結果より、AD皮疹形成に、FcεR陽性細胞が何らかの形で関与しており、それが末梢血中の割合として反映される可能性が示唆された。CD8を表出するFcεR陽性T細胞は、皮疹の増悪に関わっていると思われた。
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