研究概要 |
上記研究課題に対する最終年度のまとめは大略下記の通りである。 1)成人皮膚より得た表皮細胞の培養は,MCDB153培地のみでは安定的な継代培養が出来ず,午下垂体抽出作の添加により3継代までの安定的培養が可能となった。 2)新生児包皮由来の培養細胞を用いて,紫外線(主にUVB)による影響を調べたところ,細胞表面への抗核抗体特に抗ssーA/Ro,抗ssーB/La,抗RNP抗体が特異的に結合することが判った。この現象は,Flow cytometryにより定量的に観察出来,線量依存性で,glycosllationに依存し細胞周期とは無関係であることが判った。 3)同様の実験を,プロスタグランディンJ_2を用いて行ったところ,抗RNP抗体やssーA/Ro抗体の細胞表面への結合が誘導されることが判った。熱ショック蛋白あるいはストレス蛋白の誘導と抗ENA抗体の細胞表面への結合性の関係を知る上で,きわめて重要な事実と考えられた。 4)各種刺激により抗ENA抗体結合能が誘導された成人由来培養表皮細胞と自己あるいは非自己のリンパ球あるいは単核球との短時間培養を行い,ADCCなどの機序が発現されているか否かを検討した。正常人あるいはル-プス患者を問わず,自己にせよ非自己にせよ,培養表皮細胞の一部(5ー15%)がAO/EB染色法で細胞障害をうけていることが観察されたが,再現性につき若干の問題があることが判った。 5)血管内皮細胞の抗ENA抗体結合能については,皮膚組織切片を用いた実験では,少数例であるが陽性所見が得られた。培養細胞を用いた抗ENA抗体結合能誘導実験は現在,その反応時間等の基礎研究の段階である。
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