研究概要 |
1)本研究は平成元年度から3年間の計画で行なってきた.当初予定の種々の皮膚の炎症におけるブラスミノ-ゲン・アクチベ-タ-あるいはカリクレインの分野では興味有る成果が得られ,それぞれ断片的にではあるが,まとめた.さらに以下のごとく当初の予定外の分野で興味有る成果が得られた. 2)白血球遊走因子に関して,白癬菌・カンジダ菌・スポロトリコ-ジスの各真菌が培養中産生する因子に関し明らかにすることができた.学会発表を行ない,現在この白血球遊走因子の生化学的性質を追及しようとし各種クロマトグラフィ-を行ない,分子量の小さいペプチド性の物質が見いだされた.さらに蛋白分解酵素との関係からも追及している 3)トロンボモジュリンは主に血管内皮細胞の膜表面でトロンビンを結合し,トロンビンの凝固作用を失わせ,プロテインCを活性化せしめる作用を持つ.抗トロンボモジュリン抗体を用いて免疫組織化学的に検討し,この物質が内皮細胞の免疫組織化学的マ-カ-,特に炎症組織での血管新生を追及するのに良いマ-カ-であることが判明した. 4)ストレス(熱ショック)蛋白は種々の微生物から動物・ヒトにいたるまで遺伝学的によく保存された,すなわち共通抗原性を発揮する一群の蛋白質である.このうちHSP65と呼ばれる熱ショック蛋白は種々の感染症にともなう免疫学的異常の発現を引き起こす.いまだ予備的段階であるが紅斑症・膿疱症・血管炎・炎症性角化症など病巣感染症が原因としてあげられるような疾患でこれの異常を見いだしたので,その病因論的役割に関し,γδT細胞あるいはマクロファ-ジとの関係から追及しつつある. 5)当初予定の研究課題期間は終了したが今後もこれらの研究を発展せしめ,完成を目指すものである.
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