研究概要 |
本研究はこれまでわれわれが見い出したうつ病血小板におけるセロトニン刺激性イノシト-ル・ノ-リン酸蓄積亢進所見を,イノシトルリン脂質代謝の初期反応であるCaイオン濃度増加反応の測定により一層確かなものとするとともに,5ーHTー2受容体機能亢進を生ずる機序を明らかにすることを目的としている。また,5ーHTー2受容体機能亢進を示す神経系由来培養細胞や動物モデルを作製し,うつ病態モデルとなり得るか否かを検討するとともに,受容体刺激を伝達する細胞内情報伝達系に対する抗うつ薬の作用機序を解明することを目的としている。2年間に得られた成果は以下のとおりである。1.うつ病血小板において5ーHT刺激性のCaイオン濃度増加反応が健康成人に比して亢進していることを明らかにし、うつ病における5ーHTー2受容体機能亢進が存在することを再度確認した。2.5ーHTー2受容体機能亢進の機序として,プロティンキナ-ゼとを介する抑制機構,αー2アドレナリン受容体との相互作用ならびにGTP結合蛋白機能の亢進などが関与する可能性を明らかにした。3.神経系由来C_6グリオ-マ細胞における5ーHT刺激性Caイオン動員系は5ーHTー2受容体を介することを明らかにした。4.C_6グリオ-マ細胞の5ーHTー2受容体刺激性Caイオン濃度増加反応は48時間のデキサメサゾン処置により亢進すること,この機能亢進はグルココルチコイドー2受容体刺激によることを明らかにした。5.ACHTの反復投与はラット大脳皮質の5ーHTー2受容体結合密度を増加させることを明らかにした。4,5の成績から,視床下部ー下垂体ー副腎皮質系機能と5ーHTー2受容体機能との関連がはじめて明らかとなり,うつ病態モデルを作成できる可能性が示唆された。6.ラット大脳皮質に対するGTP結合ならびに人工脂質膜に再構成したG蛋白のGTPase活性に対する抗うつ薬の直接作用を明らかにした。抗うつ薬はGTP蛋白のαサブユニットを解離させ,その機能を調節する。
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