研究概要 |
インスリン遺伝子の発現は,膵B細胞に特異的に認められるので,膵外細胞では何らかの発現抑制機構が存在するものと想定される。そこでヒトインスリン遺伝子の5′上流の作用を検討した。その結果ヒトインスリン遺伝子のエンハンサー(-339〜169bp)を含む部位が,膵外細胞におけるインスリンの転写を抑制していることが明らかになった。さらにこの抑制効果は,フォルスコリンなどにより細胞内のcAMPレベルを上昇させると消失する事実を見いだした。この事は膵外細胞におけるインスリン遺伝子発現の抑制機構が,エンハンサーの部位のみでは説明できないことを示唆している。 一方膵B細胞が,血糖上昇に反応してインスリンを分泌する際,糖認識機構として糖輸送担体(GLUT)の関与が注目されている。著者らは,膵ラ氏島からRNAを単離し,GLUT1(赤血球型)とGLUT2(肝型)のmRNAの存在を確認した。糖濃度を上げると,いづれのmRNAレベルも上昇することを確認した。次に肥満動物としてZucker fattyラット,糖尿病モデルとしてWistar fattyラットを用い,GLUTについて検討を加えた。肝におけるGLUT2のmRNAを測定すると,5週齢のZucKer fattyやWistar fattyラットはそれぞれの対照群と差を認めなかった。しかし14週齢におけるZucker fatty,Wistar fattyラットの肝におけるGLUT2mRNAは,それぞれの対照群に比し高値であった。筋におけるGLUT4mRNAはZucker fatty,Wistar fattyラットとそれぞれの対照群の間に,実験終了時まで差を認めなかった。これらの事から、肥満や糖尿病動物では,GLUT2とGLUT4mRNAは,異なった調節をうけていることが推測され、さらにGLUT2mRNAの増加が,肥満の進展に関連していることが示唆された。
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