研究概要 |
肝からの糖の放出は糖新生系を介しているので,糖新生系の調節機構を明らかにすることは血糖の調節機構を理解する上で重要である。私共は次の2つの点から検討し,以下の成績を得た。 1.肝のフルクト-ス2,6ービスリン酸(F2,6P_2)は糖新生系Flux の指標とされているので,ラットを用い種々糖質を胃内あるいは静脈内に持続注入し,その濃度を測定した。その結果,in vivoでは肝のF2,6P_2濃度は1)細胞内因子としてF6P濃度より,合成酵素活性と分解酵素活性の比によって規定される,2)細胞外因子としては,血中インスリンとグルカゴンの濃度比と相関し,GLPーIの濃度にも依存していることが明らかになった。 2.肝の糖新生系は,脂肪酸代謝異常によって影響を受けるか否かを次の2つのモデル動物を用いて検討した。1)カルニチンパルミトイルトランスフェラ-ゼ工活性をEtomoxin投与によって阻害して脂肪酸酸化を抑制すると,肝からのグルコ-ス放出が抑制されてラットは著しい低血糖に陥った。2)C3H系juvenile visceral steatosisマウスは低血糖,脂肪肝などの症状を呈するが,本マウスでは全身性にカルニチンが欠乏しており,カルニチン投与によって脂肪酸酸化が回復すると低血糖が回復する。このように,肝での脂肪酸代謝異常は,肝の糖新生系に大きな影響を及ぼすことが明らかになった。
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