研究概要 |
近年、Toddらはインスリン依存性糖尿病(IDDM)の発症感受性を規定するのはHLA-DQ抗原であり、特にDQB鎖57位がアスパラギン酸(Asp)であると発症抵抗性が生じると報告した。今回、我々は自治医科大学内分泌代謝科通院中のIDDM患者72例と非糖尿病対照者85例についてHLA-DR抗原とDQβ alleleの同定を行い比較した。DQβ alleleの同定においては遺伝子増幅法(polymerase chain reaction, PCR法)とオリゴヌクレオチドをプロ-ブとしたdot-blot hybridization法を用いた。その結果、IDDMとの関連については、DR抗原でDR9との正の相関、DR2,DRw11(5)との負の相関を認め、DQβ alleleでDQβ3.3(DQw9),DQβBlank(DQw4)との正の相関、DQβ1.2,DQβ1.9,DQβ3.1との負の相関を認めた。ハプロタイプとしては、日本人でIDDMと正に相関するのは主としてDR4-DQw4,DR9-DQw9であることが分かったが、両者ともDQβ鎖57位はAspであり、全体としても両群ともAspの頻度が高く、Toddらの仮説は日本人では成立しないことが明らかとなった。日本人においてはDQβ鎖のみならずDRβ鎖あるいはDQα鎖もIDDMの発症に関与することが考えられ、今後の検討が必要である。DRβ鎖、DQα鎖のIDDM発症への関与の可能性はそれぞれ白人、黒人における検討によっても報告されている。本研究の成果は、第32回日本糖尿病学会(金沢、1989)、第49回米国糖尿病学会(Detroit,1989)、第1回分子糖尿病学シンポジウム(和歌山、1989)において口演で発表した。また、1990年度の日本糖尿病学会、日本内分泌学会の各シンポジウムにおいて発表予定である。論文としてはDiabetes(Vol39,No.2,266-269)に発表され、第1回分子糖尿病学シンポジウムのプロシ-ディングとして印刷予定となっている。今後は、DRβ鎖、DQα鎖を含めたより詳細な解析を行っていく予定である。
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