研究概要 |
[目的]I型糖尿病(IDDM)患者膵組織におけるウイルスDNAの検索を行なった。[方法]12例のIDDM患者の剖検により得られた膵組織切片においてIn situ hybridizationの手法を用いウィルスDNAの存在を検討した。まずペルオキシダ-ゼ標識抗サイトメガロウィロス(CMV)および、EBウィルス(EBV)probeを用いて膵組織切片上でその反応性を検討した。さらに生前採取された患者血清中のウィルス抗体価および抗膵島細胞抗体(ICA)の抗膵外分泌腺細胞抗体を測定した。抗インスリン抗体を用いβ細胞を免疫組織学的に染色し、残存β細胞と上記のマ-カ-との関連を検討した。[結果および考察]1.免疫組学的にβ細胞の残存が認められた例においては血中にICAが4例全例において認められた。また膵外分泌腺細胞抗体はうち2例において認められた。残存β細胞が認められなかった8例ではICAは陰性であった。2,In situ hybridizationによっては12例においてCMDおよべEBVは検出されなかった。3.抗ウィルス抗体を用いて検索した膵組織的所見では1例において膵外分泌腺にEBNA抗体を用い陽性所見が認められた。4.β細胞の残存が認められた4例においては膵外分泌腺周囲にリンパ球の浸潤が認められT cellリンパ球サブセットはCDー8陽性細胞であった。[結論]1.I型糖尿病患者膵においてDNAは検出されなかったが、1例においてEBVの抗原が膵外分泌腺組織に検出された。2.ICAの産生には抗原としての残存β細胞が必要であることが示唆された。また膵外分泌腺細胞抗体とICAの関連性も示唆された。 これらの成果は、本年の日本糖尿病学会で発表され、欧文論文として掲載予定(Diabetologia ih press 1990,Metabolism in press,1990)である。
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