研究概要 |
骨髄巨核球のin vitroにおける成熟過程は1)巨核球系前駆細胞(CFU-Meg)の増殖、2)DNA量の増加(endomitosis),3)胞体の成熟(cytoplasmic maturation)に大別されるが、3)がどのように調節されているかは不明である。今回はrecombinanto human erythoropoietin(rh-Epo)とthrombopoietin(Tpo:血小板減少家兎血清の50-80%硫安沈澱分画をwheat germ agglutinin columnとconcanaalin-A columnで精製したもの)が巨核球の胞体の成熟にどのような役割を果たすかを生化学的および形態学的側面から検討した。マウス骨髄細胞をinterleukin-3(IL-3)をstimulatorとして、rh-Epo,Tpo,rh-Epo+Tpoの存在下にて無血清培養系で培養し、誘導されるマウスCFU-M由来の巨核球の性状を次の項目1)acetylcholinesterase(Ach-E)量、2)serotonin量、3)ATP量、4)透過電顕による胞体の成熟度(type 1:early immature,type II:immature,type III:mature)につき検討した。 IL-3で誘導される巨核球は1),2),3)量とも低値であり、電顕でもtype1が大部分であるのに対して、rh-Epoを添加すると2)量の増加は見られるものの、1),3)量の増加は軽度であった。電顕ではtype 11の比率が増加するが、type 111の巨核球はまれであった。さらに、Tpoを添加すると1),3)量の増量も見られ、電顕でもtype 111の巨核球の比率が著増した。IL-3にTpoを添加したのみではこの現象は見られなかった。以上の結果からTpoはある程度以上に成熟した巨核球に作用する因子と考えられ、in vitroではrh-EpoとTpoとを組み合わせることにより巨核球を成熟させる事が可能と考えられた。すなわち、巨核球の胞体の成熟(血小板産生)の調節はCFU-Megの増殖とendomitosisの調節機構とは全く異なる機構によると結論された。さらに、骨髄から分離した成熟巨核球を用いて同様の観察を継続中である。
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