研究概要 |
ヒト顆粒球コロニ-刺激因子(hG-CSF)CDNAをウシ乳頭腫ウイス由来で薬剤(G418)耐性遺伝子をもつBMGNeoプラスミドベクタ-のメタロチオネインプロモ-タ-下流に翻訳方向に挿入した。得られたBMG-hGCSFプラスミドをマウス線維芽細胞であるNIH3T3細胞にリン酸カルシウム法で導入し、G418耐性細胞クロ-ンの中からhG-CSF高発現細胞クロ-ンを抗hG-CSF抗体を用いた酸素免疫測定法により選択した。このうちの1つの細胞株(NO,14)を大量培養し、コントロ-ル細胞株とともにヌ-ドマウスの皮下、腹腔ならびに静脈内に各1x10^7個ずつ投与し、その後のマウス静脈血の変化を観察した。この結果NO,14細胞を移植したマウスにおいて著明な顆粒球増多を約1週間目よりみとめ、これは他のコントロ-ル細胞移植マウスの約20倍にも及んだ。しかし、赤血球数、ヘモグロビン値、血小板数には著しい差異はみとめられなかった。移植後4週目に各マウスの骨髄ならびに脾臓を摘出し、その中の骨髄前駆細胞数を検討した。この結果NO,14細胞移植マウスの脾臓において、全血球系にわたる前駆細胞の増加をみとめた。このことにより、NO,14細胞はhG-CSFを高発現し、その移植により、マウス脾臓造血能の著明な増加をもたらしていることが明らかとなった。次にこれらの細胞を拡散チャンバ-中で培養し、このチャンバ-をマウス皮下に移植した。NO,14細胞移植マウス静脈血中の顆粒球数は第2日目よりコントロ-ル群に比べ、次第に増加した。第7日目に70%エタノ-ルでチャンバ-中を処理したところ、細胞の死滅により顆粒球数の正常値への復元をみた。次に第9日目に再度1×10^7個のNO,14細胞をチャンバ-へ導入することにより顆粒球数の増多を再現できた。この拡散チャンバ-法は、遺伝子レベルでの発現コントロ-ルが困難な現在、遺伝子治療法の臨床応用として重要と思われる。
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