研究概要 |
平成元年度中に骨髄・単球系白血病(AML,CML,CMMoL)症例と、その他の骨髄系異常(RAEB,Myelofibrosis)を以下の項目について検討した。 (1)白血病細胞の造血因子反応性増殖能(19例):rG-CSF,rGM-CSF,M-CSF,rIL-3,rIL-6などに対する白血病細胞のDNA合成を^3H-TdRの取り込み(以下、増殖反応)によって解析した。その結果AML細胞6例中5例の細胞がrG-CSF,rGM-CSF,rIL-3の全てまたはいずれかに反応し有意の増殖反応(Stimulation Index: 5〜116)を認めた。また、CMLの急性転化症例4例中1例にrG-CSFに対する増殖反応を、別の一例に骨髄付着細胞培養上清に対する増殖反応を認めた。その他の症例では上記の造血因子による増殖反応は認められなかった。 (2)白血病細胞培養上清中の増殖因子活性(21症例):rG-CSFまたはrGM-CSFに反応して増殖し得る白血病細胞を指標として培養上清中の増殖因子活性を解析した。AML 11例中3例(M4:2/3、M7:1/1)にCSF活性を認めたがM1〜M3の7症例にはそのような活性は認めなかった。CML6例(急性転化4例、慢性期2例)にはCSF様活性を認めなかったが、CMMoLの2例にはいずれも強い活性を認めた。また、M4 1例とM7 1例は自己の培養上清中に自己の増殖を促進する活性を認めた。 [成果]近年G-CSF,GM-CSFが白血病治療の補助療法として一般に使用されることが日程に上っていることに鑑み、AMLで高率に(5/6)、CML急性転化では一部に、これらの造血因子による白血病細胞のDNA合成促進が認められた意義について早急に解明する必要性を示した。一方、M4とCMMoL症例に高率に(M4:2/3、CMMoL:2/2)増殖因子(CSF様活性)産生能が認められることを明らかにした。更にM4 1例とM7 1例にについては、自己培養上清中に自らの増殖を促進する活性(オ-トクリン増殖)が存在することを明らかにし、このメカニズムがこれらの白血病の発症に関わる可能性を示唆した。
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