研究概要 |
まずKー562細胞の赤芽球系への分化過程におけるsecond messenger(せ)の役割について検討した。分化誘導因子として分化へのcommitmentを生ずるAraーC、TdRと、生じないheminを用いた。dbcーAMP,staurosporine,Hー7は両者による細胞分化を阻害したが、PKCの活性化剤であるOAGはAraーC.TdRによる分化を阻害し、heminによる分化を増強した。AraーCによる分化のcommitmentに対するCHX(1ug/ml)の効果をΣーmRNA発現を指標として検討したところ、commitmentはCHX耐性であり、分化の過程をCHX耐性のcommitment step(CS)とphenotypic expression step(PS)に分割出来ることが判明した。各ステップ別に(せ)の役割を検討したところPKAは両ステップに対し阻害的に働き、PKCは二相性、すなわちCSに対し促進的、PSに対し阻害的に働く結果が得られた。次にHLー60細胞の1α25(OH)_2D_3(D)による単球マクロファ-ジ系への分化に対する(せ)の役割について検討した。すでに報告したごとくMgイオン欠乏(Mgー)培地中でD_3存在下にHLー60細胞を培養すると分化へcommitするが形質発現は生じない(Okazaki et alJ Cell Physiol 131,50,1987).Mgー培地中では分化過程の中断が分化形質mーRNAの発現前に生ずることがlysozym mーRNAの検討から明確になった。この系をもちいてHLー60細胞の分化過程をCSとPSに分け各ステップに対する(せ)の役割の検討をおこなった。PKAは両ステップに促進的に働くが,PKCは二相性に、すなわちCSでは阻害的に、PSでは促進的に働く結果が得られた。上記よりKー562細胞の赤芽球系への分化,HLー60細胞の単球マクロファ-ジ系への分化の過程に於てPKA,PKCが反対の役割を演じている可能性が示唆された。またこの結果は多能性幹細胞が異なるcell lineageに分化する際の振り分け機構の差異を反映している可能性が示唆される。
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