顆粒球は骨髄で産生され、成熟したのち末梢血中へ流出する。この流出は常時行なわれており、感染時や薬剤投与時に変化する。しかし顆粒球が骨髄から流出する機構については充分に明らかでない。今回骨髄顆粒球機能、特に付着能、運動能、活性酸素産生能、殺菌能を末梢血顆粒球と対比しながら検討した。骨髄顆粒球は末梢血顆粒球に比べて運動能、殺菌能、活性酸素産生能が低値であった。特に運動能の低下が著明であり、数種のchemotactic factorに対して方向性をもった運動(chemotactic activity)の低下を認めた。この所見は顆粒球の骨髄流出を考える上に重要な所見と考えた。 ヒト体内に存在する顆粒球の9割は骨髄に在る。骨髄で産生された顆粒球が末梢血中へ流出するためには顆粒球が何らかの機能を獲得し、かつ流出を惹起する因子が必要と思われる。骨髄中の顆粒球は形態的に末梢血顆粒球と差異を認めないが、機能的には成熟過程にあることを示した。一方骨髄より流出を促す因子については不明である。実験的に用いた遊走因子は生体内で作用する物質ではなく、従って生理的作用物質が何かを同定することが今後の課題である。この点に関して骨髄異形成症候群に関する我々の検討は興味深いと思われる。この疾患は骨髄には充分量の顆粒球を認めながら末梢血中にはこの数が極めて少ないのを一般的な特徴の1つとする。この病態は骨髄から末梢血への流出に異常の在る可能性があり、本研究課題と深く関連を持つと考えた。本疾患患者の骨髄顆粒球について検討したところ運動能の低下が認められ、現在骨髄中の液性因子について検討中である。 以上の成果を別紙の如く報告した。なお本課題に関して我々の観点ばかりでなく、骨髄微細環境の解析なども重要であると考えている。
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