研究概要 |
多発性骨髄腫63例と形質細胞性白血病4例の計67例を対象として,染色体分析を行った.15例でbcl2遺伝子の再構成について検索した.また,これらの成績と臨床デ-タの関連性を検討した. (1)形質細胞性腫瘍20例で染色体異常を検出した(30%).多発性骨髄腫(MM)9例,白血性骨髄腫(LM)8例,形質細胞性白血病(PCL)3例である.病期の進行した症例や特殊型で染色体異常の頻度が高く,体腔液蓄留例では4/5,LMは8/8,PCLでは3/4,皮膚腫瘤からは1/1であった.四倍体域の染色体異常は3例(異常例の15%)でみられ,おのおの腹水の貯留した白血化例,白血化例,PCLであった.症例3では短期培養法では正常核型であったが,LPSを添加する培養法を行い異常核型が検出できた.(2)構造異常は14q,1q,6q,7q,11qに多く,とくに14qの異常は10例(染色体異常例の63%)でみられ,すべて14q32を切断点てする14q+であった.残りの構造異常の切断点は一定していなかった.ドナ-不明のものが多く4例,t(6;14)によるものが2例,t(14;18)によるものが2例,t(3;14),t(7;14)が各1例であった.No.1染色体の構造異常は11例でみられ,うち8例は14q+も同時に持っていた.(3)2例はANLL(M2)を合併し,うち1例では共通する異常としてmonosomy7,der(11)t(11p;13q),der(16)t(2q;16p)が認められた.(4)t(14;18)を認めた症例を含む5例でbcl2遺伝子の再構成について検索し,何れも胚細胞型を示した.また,染色体分析はできなかったがbcl2を検索できた10例も胚細胞型であった.(5)染色体分析時の病期は16例中14例が病期IIIであった.LMは5/7,PCLでは2/2,MMでは2/7に14q+を検出し,白血比例とPCLで頻度が有意に(p<0.05)高かった.LDHが高値の8例では全例14q+を検出したが,LDH正常の8例では7例が14q+以外の異常であり,LDH高値と14q+には有意の相関があった(p<0.01).染色体異常の種類と診断からの生存期間に相関はみられなかった.
|