研究概要 |
1、環境要因,特に栄養条件が顆粒球メダラシン量および活性にどのような影響を与えるかを調べた。牛肉の脂肪成分を10%あるいは20%飼料に添加し,マウスに投与して経過を追って顆粒球メダラシン活性を測定した結果,2週間後には有意に低下し,4週間後には更に低下した。豚肉より脂肪成分を取り出し,牛脂肪と同様にマウスの飼料に添加したところ,牛脂肪とは反対に顆粒球メダラシン活性は増大した。従って牛脂肪と豚脂肪では顆粒球メダラシン活性に対する作用は逆であることがわかった。次に各種魚類より脂質を抽出し,マウスの飼料に種々の割合で添加し,顆粒球メダラシン活性を経過を追って測定した。その結果,エイコサベンタエン酸およびドコサヘキサエン酸の含量の少ないアユおよびウナギの脂肪では顆粒球メダラシンは不変であったが,両脂肪含有量の高いサバ,イワシ,ニシン,アンコウの脂肪投与ではメダラシン活性増大した。従って脂肪の成分によって顆粒球メダラシン活性に対する影響は異なり,生体防御能に対する脂質の影響も異なるものと考えられる。 2.ヒト骨髄中のメダラシンインヒビタ-の精製。ヒト骨髄細胞よりペプチド性低分子インヒビタ-を精製し,その構造を明らかにした。34個および36個のアミノ酸残基よりなるインヒビタ-が見つかったが,ヒトヘモグロビンβ鎖のC末端付近の構造を有することがわかった。本インヒビタ-のN末鎖より20個およびC末端より21個のペプチドを合成してメダラシンに対する阻害活性を調べたが,両者共に阻害活性は認められなかった。従ってインヒビタ-として作用するためにはある立体構造が必要なものと思われる。本インヒビタ-は基質と非競合的に可逆的にメダラシン活性を阻害し,他のセリンプロテア-ゼよりメダラシンに対する阻害活性が著明であった。
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