研究分担者 |
秋山 鴨夫 東京大学, 医科学研究所, 教授 (80012748)
長尾 桓 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (90143487)
三田 勲司 東京大学, 医科学研究所, 助手 (30190672)
別宮 好文 東京大学, 医科学研究所, 助手 (70199454)
佐藤 好信 村上病院, 外科, 医員
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研究概要 |
分離肝細胞を微小担体の一つであるCytodex3(平均直径175μm)上に接着させる試みは予想外に困難で“exvivo"で肝細胞と担体からなるハブリッド型の肝細胞群を作製することは断念した。 そこで分離肝細胞(1×10^7/mlPBS)と微小担体(1×10^6/mlPBS)を別々または投与直前に混合して門脈内に注入してみた。この場合,それぞれが肝両葉内へ移行すると門脈流入血の急速な遮断により術後早朝に急性門脈うつ血あるいは阻血の肝不全で死亡するレシピエントが多った。特にこの注入後の門脈阻血効果は肝細胞の場合は強く、より大きな粒子であるCytodex3では軽微であった。いずれにしても注入量が多くなると術死が避けられなかった。この術死を防ぐ工夫をした。それは肝葉の部分的一時的阻血法により非注入葉を作製する方法である。 この方法を用いて(1)肝細胞だけ,(2)Cytodex3だけ,(3)肝細胞+Cytodex3,の3通りで門脈内注入を行った。注入葉は同種ラットの左葉(肝全体の約80%を占める)とした。注入後12時間以降の肝組織の組織学的検索では,担体は肝阻血をきたすことなく門脈内に定着し時間が経つとともに表面が一層の細胞層でおおわれるようになる一方,デキストランでできた担体は次等に変形,吸収された。このような現象は(1)の肝ではみられず(3)のほか(2)でも認められたので,担体表面に接着した細胞は主として単球である可能性が高い。しかしグリコ-ゲンの存在を示すようにPAS染色陽性なので(3)では肝細胞または胆管細胞がそれらの担体上に存在している。可能性もある。次のステップとしては門脈内で浮遊する担体の細胞接着性をコントロ-ルすることと酵素組織学的または免疫組織学的に担体周囲の細胞を検討することであろう。 以上のような次第で新しい肝細胞移植法の確立に至らず,その治療効果についての知見も得ることができなかったことは誠に遺憾である。
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