研究概要 |
妊娠90〜120日令のシバヤギ12頭を用いて横隔膜ヘルニアモデルの作成を行った。気管内挿管の上,フロ-センにて全身麻酔下に開腹し,子宮内に胎仔を同定した。双胎の場合には1胎仔にのみ手術を行い,他胎仔は手術を行わずに対照群とした。モデル作成後1週以上生存した6頭及び対照群としてその同胞胎仔4頭にて,胎仔超音波検査による肺/胸郭断面積比,及びドップラ-計測,肺/体重量比,ラデイアル・アルベオラ-ル・カウント,組織中レシチン/スフィンゴミエリン比を検討した。 肺/胸郭断面積比はヘルニア作成後死亡までの期間が長くなるにつれて,低下する傾向がみられた。対照群及び横隔膜ヘルニアモデルの肺/胸郭断面積比はそれぞれ0.58±0.40,0.41±0.07と有意差を認めた。剖検例での肺低形成の指標として従来用いられている肺/体重量比は対照群では0.025±0.006であったのに対し,横隔膜ヘルニアモデルでは0.019±0.005と低下を認めるものの,有意差はみられなかった。しかしこれら両群において肺/胸郭断面積比と肺/体重量比の間に有意な相関を認めた。またラデイアル・アルベオラ-ル・カウントでは患側・健側肺間に有意差を認めたが,肺成熟の指標として用いられている肺組織中のレシチン/スフィンゴミエリン比は横隔膜ヘルニアモデルの患側・健側肺間に有意差を認めなかった。 胎仔ドップラ-検査による循環指標の検討では,各指標とも死亡直前に検査された例を除き異常値はみられず,横隔膜ヘルニアモデルと対照群間に有意差を認めなかった。 以上の結果より,胎仔超音波検査による肺/胸郭断面積比の計測は肺/体重量比の予測,ひいては肺低形成の出生前評価に有用と結論された。
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