研究概要 |
平成元年度の研究により、RIA法によるPGE_2測定法は確立することが出来た。この手技を用いて、ヒト直腸癌において、健常粘膜よりも癌組織の方がPGE_2濃度が高いことが示唆された。又、生検材料と手術材料のPGE_2では、前者が後者より5〜10倍位高値となることがわかった。これはヒト食道癌でも同様の傾向であることが示唆された。また実験的には、NN1ー1をマウス大腿に皮内注射した場合、注射後約10日前後、即ち腫瘍径がφ1cm前後の付点より肺転移が生ずることが判明した。腫瘍径が1.2cmの付点で50Gy放射線照射を施行すると腫瘍中PGE_2は照射後3時間,1日後では変化がなかったが、2日後に軽度低値となった。しかし、5日後にはほぼ照射直後と同じ値となった。以上より、実験的にはC3Hマウスを用いてsyngeneicなPGs産生腫瘍による自然肺転移モデルを作製し,インドメサシン投与による小肺転移巣の実験的治療を施行し、更に放射線治療による効果も検討する予定であった。また臨床的には食道癌,直腸癌のヒト手術材料を用いて腫瘍中のPGE_2濃度を測定し,ヒト癌のPGE_2産生能を健常粘膜と比較することとした。しかし残念乍ら東京大学では現在RIA法を用いることが事実上不可能となっている。本研究ではRIA測定法が不可欠であり,残念乍ら現在のところ、本研究においてはこれ以上の新たな実績を得ることが不可能な状況である。現在RIA法の可能となることを待っており、本年にはそれが可能となる予定であり、若干の研究時間延長とはなるが、ひき続き研究を続けるべく、現在情勢の変化を期待している状況である。
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