研究概要 |
1.ゴ-ルデンハムスタ-膵より分離したラ島の,比較的急速な冷却速度(25℃/min)での凍結保存を試みた.解凍後のラ島の,組織学的所見や生物学的機能は保持されていた.これら1,000個の腎被膜下への同種同系移植実験では,移植後正常値を維持し,腎摘出にて再び高血糖となり,その移植効果が窺たが,recipientをFisher系STZ糖尿ラットとした異種移植実験では,対照の非凍結ラ島の移植と比べ,期待された免疫原性の低下は認められなかった. 2.ラ島を酵素処理し得られたラ島細胞を凍結保存し,解凍後培養を付加することで得られたラ島様組織(frozen and cultured islet cell cluster,以下FCIC)の組織学的及び生物学的機能の検索や,免疫原性の低下に関して検討した.その結果, (1)FCICの組織像は,H.E.染色像でやや小さいながらも,一週間培養のみを付加した非分散培養ラ島(以下CI)とほぼ同様の形態を示し,グルコ-ス刺激によるインスリン分泌やインスリン含有量/DNA含有量比などからみた生物学的機能も,CIとほぼ同じ値を示した. (2)ラ島細胞の凍結ー培養保存が,細胞膜蛋白に如何に影響するかをSDSーPAGEにて検討すると,EDTAーDispase処理によりラ島より分散されラ島細胞となった直後(IC)の細胞膜表面蛋白には,明瞭なbandは認めなかった.しかし,培養のみにより形成したラ島様組織(islet cell cluster,Pseudoislet,以下PI)やFCICには小数のbandの出現が認められたが,対照の一週間培養した非分散培養ラ島(CI)とは数量ともに異なるpatternであった. (3)FCICの移植実験:recipientには,空腹時血糖が300mg/dl以上を維持したSTZ糖尿病ラットを用い,約1000個のFCICを左腎膜下に移植した.移植後,空腹時血糖および尿量を測定した.異系移植の対照には,CI約1000個を左腎被膜下に移植したラット(Fischer系→Lewis系)とし,生着日数を,血糖値が200mg/dl以上の値となった日までの日数とした.同種同系(Fischer系→Fischer系)移植では,移植後直ちに血糖の正常化を認め,移植8日目の左腎摘出により,血糖値は再び上昇した.同種異系(Fischer系→Lewis系)移植では,FCIC移植群の平均生着日数は12.5±5.0日であり,対照としたCI移植群の3.8±1.0日に比し有意な生着期間の延長が得られた.
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