研究概要 |
本研究はprotein A(PA)への血漿潅流で観察される抗腫瘍反応を菌物質を用いないで惹起する技法の開発とその最も適した応用方法の検討を目的としている。[A]PA処理にて以下の結果を得た。1.Vx2腫瘍移植家兎において、処理血漿投与後の変化として、光顕的には胞体の膨化浮腫、空胞化あるいは腫瘍構造の乱れを伴ったコラ-ゲンの増生と腫瘍細胞数の減少を観察した。電顕的には細胞間隔の開大、腫瘍細胞膜の連続性の破綻を認めたが、核やシトコントリアの膜は比較的保たれていた。電顕による変化は処理血漿投与後3時間目の標本から見られた。2.ヒト血清と手術標本を用いたin vitro cytotoxicity assayにて、細胞毒性は処理血清そのものには認められず、腫瘍細胞が自己の(担癌)血清に浮遊させれいる場合にのみ観察された。[B]1、5MNaCl又は0、5MKClにて処理した血清について以下の結果を得た。1.非担癌血清(または血漿)を処理後に投与しても抗腫瘍反応が観察された(Vx2腫瘍家兎および臨床治療実験にて)。2.血清を56℃にて30分間前処理した場合には、塩処理をしても抗腫瘍反応は得られなかった。(家兎)。また処理血清を腫瘍移植後24時間目に投与しても抗腫瘍反応は得られなかった。3.ヒト血清の高張塩処理にて補体の活性化(C4a,C3a,C5aの増加)を認め、その程度はPA処理の場合と同等かそれ以上であった。ヒトでの臨床治療実験において、抗癌剤の併用は各々を単独で用いた場合に想定される抗腫瘍効果の和をはるかに超える抗腫瘍効果が得られたと考える(進行乳癌患者にて4/4)。 これらの知見は、1.血清(又は血漿)の体外処理の意味は補体の活性化にあるであろうこと、2.毒性は腫瘍細胞の細胞膜に対して発現され、3.その反応は抗原依存性あることを示唆しており、3.その機序からも抗癌剤の併用は極めて有効であろうと考えられる。
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