研究概要 |
心機能補助を目的とする骨格筋グラフトの耐疲労性の獲得及び出力向上の為には骨格筋代謝が好気的代謝優位であることが必要であり、1987年から低頻度電気刺激による骨格筋の耐疲労性形質転換と骨格筋グラフトの血行改善に関する基礎的研究を進めてきた。まず骨格筋の形質転換(Transformation)に関しては低頻度電気刺激(preconditioning)で生じる(1)骨格筋筋線維の形態学的変化および(2)筋電図を用いた運動単位の生理学的変化を解明した(骨格筋による心機能補助に関する研究ー画像解析を用いた組織学的検討.人工機器19:231ー234,1990)。骨格筋筋線維の形質転換に伴う断面の円形化、形質転換後の運動単位電位が保たれることを初めて報告した。ついで(3)骨格筋グラフトの血行動態に関しては、グラフト末梢部の組織血流量の急性期低下を示し、4週間の血行ネットワ-ク形成期間(Vascular Delay)によりグラフトの血行が改善することを示し、グラフト部位による違いを初めて明らにした(骨格筋による機能補助ー広背筋グラフトの組織血流量ー。人工臓器20:756ー760,1991)。また(4)グラフトの電気的駆動が血行に与える影響の心検討では骨格筋グラフト駆動による血流量の上昇、収縮時の動脈血行の低下、静脈血行に対するグラフト収縮のポンプ様作用などを明らかにしてきた(日胸外会誌39:1599,1991)。これらの骨格筋の耐疲労性獲得に関する基礎的な研究を踏まえて、骨格筋のより効率のよい心機能補助を目指している。効率よく最大限の補助を得るためには骨格筋が疲労状態に陥ることを未然に防ぐための何らかの骨格筋機能の監視方法が必要となる。我々は現在までに得た基礎的なデ-タに基づいて限られた条件下ではあるが、(5)誘発筋電図を骨格筋疲労の監視法として用いる方法を開発しつつある(Monitoring of the skeletal muscle graft fatigue by electromyography.Abast.Int J Art Org 14:567,1991)。
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