研究概要 |
脳虚血中にアラキドン酸を含む不飽和脂肪酸が大量に遊離し、再開通後に、プロスタグランディン(PG)やコイコトルエンが増加することはよく知られていた。そこで、脳虚血後の遅発性神経細胞壊死にはたすアラキドン酸カスケ-ドの役割に注目した。まず砂ネズミ5分間前脳虚血モデルを用いて、虚血再開通後に増加するPGF_<2α>の局在を免疫組織化学的に検討した。その結果、正常例では血管(脳内および脳表)壁のみに、染色性が認められた。5分虚血、5分再開通を行った動物では、血管壁グリア細胞、ニュ-ロン(とくに海馬の錐体細胞)で著明な染色性の増加をみた。これらの染色性の増加は、動物に虚血前にインドメタシン(10mg/kg)を投与すると著明に減弱した。つぎに、インドメタシン前投与により、遅発性神経細胞壊死が抑制されるか否かを検討したところ、インドメタシン(1,2,5,10mg/kg)は、砂ネズミ5分間前脳虚血後におきる神経細胞壊死を有意に抑制した。さらに、インドメタシン以外のサイクロオキシゲナ-ゼ阻害剤のピロキシカムおよびフルルビプロフェンとリポキシゲナ-ゼ阻害剤のAA801,BW755Cを用いて、いずれの酵素産物がより強く神経細胞壊死の進展に関与しているかを検討した。ピロキシカム(10mg/kg)およびフルルビプロフェン(10mg/kg)は、同じ砂ネズミ5分前虚血モデルにおいて、有意に遅発性神経細胞死を抑制したが、AA801BW755Cは抑制効果を有しなかった。以上の実験結果は、砂ネズミ前脳虚血後におきる遅発性神経細胞壊死の進展に、サイクロオキシゲナ-ゼ産関が関与することを示唆している。
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