研究概要 |
強直性脊椎骨増殖症の成因解明の一環として,レチノイドの本症に関する研究を行い,次の成果をえた. 1.レチノイドを連続投与したラットの脊柱には散発的に靭帯骨化と類似の所見が得られたが,ビタミンAの血中濃度や投与量あるいは投与期間に依存して一定の傾向で靭帯骨化は証明できなかった.ビタミンA総投与量が増加するにしたがって骨塩量は減っていく傾向を示し,高頻度に骨吸収像が認められた. 2.ビタミンA強制経口投与により,ラットにビタミンA過剰症を起こしたが,推定実測生存率からビタミンA濃度が上昇するほど生存期間は短くなっていた.靭帯骨化の形成のためには長期間のビタミンA過剰状態が必須であることが推測されるので,長期間継続できるビタミンA投与方法について検討の余地があると考えられた. 3.ビタミンA過剰ラットにおける肝では,ビタミンA投与用量にしたがってビタミンAが貯蔵されていることが判明したが,アキレス腱部にはビタミンA貯蔵細胞はみられなかった.靭帯骨格系には,ビタミンAを貯蔵するための細胞が少ないことと,ビタミンAの標的細胞としての機能が備っていないことが判明した. 4.器官培養骨に対するビタミンAの影響を調べたが,鶏胎児の大腿骨、脛骨の成長抑制が明らかになった。これは軟骨細胞に対するビタミンAの濃度勾配に依存する抑制作用を示唆していた. 5.軟骨のRBPの局在を調べるために,各種の軟骨組織をもちい免疫組織学的に検索した.RBPは,胎児軟骨の細胞や成長軟骨の周囲や,関節軟骨,変性した関節軟骨,椎間板において認められた. 6.強直性脊椎骨増殖症患者および対照例について,血清ビタミンA濃度を測定したが,強直性脊椎骨増殖症と血清ビタミンA濃度との関連を証明することが出来なかった.
|