研究概要 |
前年度までの研究において発ガン剤9,10ーdimethy1ー1,2ーbenzanthraceneによるラット発生悪性線維性組織球腫(MFH)の組織発生起源に関しては、本腫瘍を構成する2種類の細胞(組織球様細胞及び線維芽細胞様細胞)のうち、線維芽細胞様細胞がその本体であることが強く示唆された。これはおもに形態学的観察および免疫組織化学的観察によって行われた。 次いでMFH細胞を用いて単クロ-ン抗体を作成した。得られた単クロ-ン抗体は、一部上皮性細胞及び間葉系細胞と反応するほかは正常組織とは反応性を有さず、一方MFH細胞のうち線維芽細胞様細胞と反応性を有している。本抗体を用いて、腫瘍発生初期における細胞染色性について検討した。すなわち、9,10ーdimethy1ー1,2ーbenzanthraceneをラットに投与後、経時的に組織を切り出し本抗体で染色した。その結果腫瘍化がすすむにつれて、本抗体に対する陽性細胞が増加することが確認された。このことは線維芽細胞様細胞がMFHの腫瘍本体であることを強く示している。また本抗体は間葉系細胞とも反応性を示すことからMFHの組織発生起源は間葉系細胞であることも、同時に示唆するものと考えられる。 以上のように単クロ-ン抗体を用いて検討においてもMFHの組織起源は未分化間葉系細胞であり、腫瘍構成細胞のうち線維芽細胞様細胞が腫瘍本体であろうとの結論を得た。前年度までの研究(形態学的観察および免疫組織化学的観察)にくわえ、単クロ-ン抗体を用いるという多方面からのアプロ-チによって、MFHの組織起源に関してはほぼ明らかになったものと考えられる。
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