研究概要 |
1975年Karpukinらは,経直腸的超音波照射装置を開発し,慢性非特異性前立腺炎にこの治療法を用いた.照射時にハイドロコ-チゾンを同時に肛門内に挿入し,治療効果が高められるとの報告がなされ,我々も追試を行いその有効性を確認した.その後この新しい治療法が他の前立腺疾患に応用できるのではないかと考え,まず高齢化社会の到来とともに増加しつつある前立腺肥大症に着目した.最近では前立腺肥大症の初期治療などを目的として,保存的治療の開発が盛んとなり,温熱療法をはじめ各種の試みが実施されている.超音波治療もその一つになりうるかは興味のあるところであり,その点からも各種の検討を行った. 照射条件はパルス10msec,出力0.4W/cm^2(約500kHz),1日1回,連日照射7日間を1ク-ルとした.まずパイロット試験として,25例の治験を実施,自他覚所見ともに約40%の改善をみた. さらに症例を拡大して,115例を対象に治験を行ったところ,自覚的所見は40%の改善をみたが,他覚的所見は第一次治験ほどの改善を示さなかった.治療後6ヶ月以降の追跡可能例は72例で,その中13例(18%)が手術療法を受け,その中の70%は治療終了直後に比して自覚症状が悪化していた.17例(24%)は薬物療法が行われ,過半数の42例(55%)は無治療で経過できた.その中で17%が時間の経過とともにさらに自覚症が改善する傾向がみられた. 本治療法は局所療法であり,全身への影響を含め副作用が殆どみられず,今後さらに照射条件,治療方法を検討し改善をはかれば,前立腺肥大症に対する保存的治療法の一つとなり得るという期待が持たれた.
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