研究概要 |
1.多分化能を有するヒトEmbryonal Carcinoma(EC)培養細胞NEC14は、in vitroで分化誘導物質HMBA(0.01M)3日間処理で、形態的、細胞形質的に分化することが確認された。(1),細胞表面抗原については、分化誘導後ヒト主要組織適合抗原HLAーA,B,Cの顕著な発現がみられた。又stage specific embryonic antigens(SSEA)は分化誘導前後においてSSEAー1^-/SSEAー3^-→SSEAー1^+/SSEAー3^-の変化が認められた。(2),種々のレクチン結合基のうちpeanut agglutinin (PNA)結合基が分化誘導後減少した。(3),中間径フィラメントの分化誘導前後における変化の特徴は、誘導後のみvimentinが明らかに検出された。(4),細胞外マトリックス蛋白であるtenascinは分化誘導後顕著に検出された。以上の結果から、NEC14細胞は、HMBA処理にて主として中胚葉由来間葉系の形質を発見することが判明した。又、このNEC14細胞にNーmycをトランスフェクトしたところ、HMBAによる分化誘導が抑制されることが明らかとなった。 2.神経特異エノラ-ゼは、Immature teratomaおよびDysgerminomaに対し血明診断的価値を持つことが見い出された。 3.我々は、in vitroのspheroid培養により高率に神経ロゼット形成を示す細胞株を、ヒトteratocarcinoma由来の培養株PAー1より樹立した。この細胞株は、神経外胚葉系抗原(A2B5,HNKー1,NCー1)が陽性であったが、ヒトembryonal Carcinoma 抗原(SSEAー3,K21)は陰性があった。また、NSE,S100蛋白、ビメンチンが陽性であったが、GFAP,NFs,ミエリン塩基性蛋白は陰性であった点より、末熟な神経外胚葉系に属する性格を持つと考えられた。この細胞株の神経ロゼット形成過程には、種々の細胞外基質(ラミニンなど)の合成、極在化が重要な役割を果していることが、ウェスタンブロッティングおよび免疫組織染色より明らかとなった。
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