研究概要 |
1)AvidinーBiotin Peroxidase Complex Method(ABC法)によりα atrial natriuretic polypeptide(αANP)の免疫組織化学的局在性について検討した結果、αANPは(1)絨毛膜板内の栄養膜細胞,(2)卵膜の栄養膜細胞層,(3)羊膜上皮細胞,(4)脱落膜細胞層に局在することがわかった.2)脱落膜細胞におけるαANP受容体についてScatchard plotsにて解析したところ,Kd=135 pM,B_<max>=81pM/10^6cellsの単一種の特異的受容体の存在することがわかった.つまり,脱落膜細胞には高親和性のαANP受容体が細胞当り1.45x10^4個存在するものと考えられた.3)妊娠初期脱落膜細胞を比重遠沈法にて分離した後,αANPを添加し,培養上清中のcyclic3':5'guanosine monophosphate(cGMP)産生量への影響を検討したところ,αANPは用量依存性に約15倍まで産生量を増加させることがわかった。4)αANPの生理作用を検討するため,in vitro脱落膜化誘導培養系を用いて検討したが,子宮内膜間質細胞の脱落膜細胞への分化過程には何ら影響を及ぼさないものと考えられた.ただし,thymidine uptakeは用量依存性に増加したので,ヌクレオシド代謝には関与するものと考えられた.次に,ヒト卵膜器官培養系を用いて検討を加えた結果,5)αANPは胎児側hemiーchamber・母体側hemiーchamber間において電解質濃度較差および浸透圧較差を用量依存性に惹起した.6)母体側hemiーchamberへのαANPの添加は,胎児側hemiーchamberにおけるprolactin(PRL)濃度の有意な上昇を惹起した. 以上の如く,胎児(胎芽)発育環境においてαANPが特異的局在性を示すとともに,重要な生理作用を発現していることを初めて明らかにすることができた.
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