研究概要 |
1.緒言ー前庭機能を制御する小脳皮質はその線維結合から小脳片葉、小節、虫部垂腹側部に位置しているとされている。しかしそれらの機能を持った皮質領域が固定されたものなのか、それとも発達早期に前庭小脳が損傷された場合、その他の皮質領域にも潜在的に前庭機能を代償し得る能力があるのかどうか明らかではない。よってこれらのことを明らかにするために以下の研究を行なった。 2.実験方法ー出生後24時間以内の新生児ラットを2群に分け、実験群については虫部垂、および小節を電気的に破壊した。もう一群は対照群とし、生後14日まで経時的にRighting reflex,Negative geotaxis,Air righting testなどの行動試験を行い、平衡機能の障害を調べた。生後60日後から実験群についてHRP法を用いて隣接皮質の線維結合の変化を調べた。 3.結果と今後の展開ー成長期の行動試験によって虫部垂、小節に破壊巣が見られた例では対照群との間に有意の行動障害が見られなかった。しかしながら小脳の内側核が破壊された例ではRighting reflex、Negative geotaxis testにおいて反射成立の遅延が見られた。このことは新生児期の前庭小脳を破壊しても、他の皮質が前庭機能を代償する可能性を示唆するものである。次に実験群のAdult期における線維結合の変化であるが、これについては主として代償する可能性の高いと考えられる隣接皮質である虫部錐体の線維結合の変化を調べた。その結果虫部錐体から、虫部垂、小節が投射する前庭神経核群には投射しないことが明かとなり、虫部錐体以外の皮質領域が代償すると考えられる。これは豊富な皮質前庭神経核結合を有する片葉が行なっているのではないかと考えられ、現在、同時に片葉の皮質結合も検索中である。
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