研究概要 |
PDP11/23電子計算機の制御のもとに音声合成装置DECtalkを駆動し、日本聴覚医学会制定の語音聴力検査用57式語表の全語音を合成した。次いでPDP11/73電子計算機の制御のもとにソフトウエアシステム ILSを駆動し、その中のディジタルフィルタによって上記の合成語音に周波数歪みを加え、周波数歪み語音列を作成した。 また67式語表についても同様の全語音を合成し、無歪みの一桁数字を用いて語音間隔を変化させ、この変化が語音聴力に及ぼす影響を検討した。これらの語音系列はすべて一旦ディジタルデ-タとして作成した後、ポ-タブルDATレコ-ダにディジタル記録し、D/A変換して語音聴力検査に利用した。 対象は正常成人31名、内耳性難聴患者21名、伝音性難聴患者25名、老人性難聴患者20名、頭蓋内病変の存在が確定している後迷路性難聴患者9名であった。これらにつき純音聴力検査、従来の方法による語音聴力検査等を行った後、周波数歪み語音を含む合成語音聴力検査を行った。 正常者においては、無歪合成母音の明瞭度は常に100%であったが、子音を含む音節の明瞭度は平均84%であり、肉声語音より冗長度が低いことが推察された。また周波数歪み合成母音では高域遮断周波数が3.3KHz以下になると明瞭度の低下がおこることが確認された。 内耳性難聴症例では合成語音の明瞭度が平均73%であったが、正常者との差は有意でなかった。伝音性難聴患者における合成語音明瞭度は平均85%であり、各子音ごとに検討しても、正常者とほゞ同様であった。老人性難聴症例では、/k/,/t/,/h/,/s/群および/b/,/g/,/r/,/d/,/s/群の明瞭度が有意に低下しており、時間分解能の低下もみられた。頭蓋内病変群では、老人性難聴でみられた明瞭度の低下に加えて、/m/,/n/群の明瞭度が老人性難聴群よりも有意に低下していた。
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