研究概要 |
βーグリセロリン酸カルシウムとアルカリフォスファタ-ゼを用いた石灰化実験系(1),無機化合物としてのカルシウム塩及びリン酸塩より調整した溶液を用いた石灰化実験系(2),さらにアガロ-スゲルを用い,両側よりカルシウム及びリン酸を拡散浸入する石灰化実験系(3)で,コラ-ゲン及びオステオネリチン,グラ蛋白,象牙質リン蛋白などの非コラ-ゲン性蛋白の核形成能を検討した。その結果、コラ-ゲン単味には,いずれの系においても促進並びに遅延効果は認められず,少なくともinitroの石灰化実験では,コラ-ゲンは本質的な役割を何ら果さないことが明らかとなった。また,実験系しとての結果より,各非コラ-ゲン性蛋白は,遊離状態では核形成能を有せず,核形成さらにそれ以降の結晶成長阻害することが明らかとなった。しかしながら,核形成及び結晶成長が阻害されると,生成するアパタイトは徴細となり,より骨及び象牙質アパタイトに形状,結晶子の大きさ,結晶性の点で,類似してくることが示された。さらに,実験系2と3より,不動化もしくは,運動状態が束縛された蛋白は,阻害効果が極めて徴弱となり,特殊な条件下では核形成能を発現し,それ以降のアパタイトの析出も促進することが示された。これらの結果より,運動状態が束縛された蛋白は核形成を促進し,遊離状態の蛋白は,核形成及びアパタイトの結晶成長を抑制する可能性が示唆された。実際の石灰化部位でも,蛋白は種々の状態で存在し,ある状態の蛋白が核形成を促進し,他の状態の蛋白は結晶成長を抑制しているとも推論でき,硬組織持有蛋白には二面制があることが推察される。今後,この蛋白の二面性という視点からの,蛋白の石灰化に果す役割に関する研究が重要であると考えられる。
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