研究概要 |
唾液腺の研究は数多く行われているが、殆ど腺房部や導管系でも線条部と顆粒管の研究に限られ、主導管の研究は少なく未知のまゝ残されている点が多大である.そこで助回、今まで研究が皆無であったマウス主導管上皮の構造を明らかにし,その機能を解明する目的で研究を行い、次の事を明らかにした. 1.雄性マウス主導管上皮はtypeーI,ーII,基底細胞から構成されていた。TypeーI細胞はミトコンドリア,滑面小胞体が豊富で,基底側に基底陥入を有していた.TypeーII細胞は西洋ナシ型をしていて、基底陥入はない。最も特徴的なことは、核の上下の細胞質に電子密度の高い顆粒が存在する事であった。組織細胞化学本研究(AcPase反応実験,複合糖質反応実験,脂質抽出実験)により,この顆粒の主成分は脂質である、顆粒周囲や内部に点状に水解酵素が存在する事が明らかになった.この顆粒はミトコンドリア由来であると考えられた。またこの顆粒が管腔内に存在する像も観察され,水分・イオン代謝よりむしろ何らかの物質を加えることにより、最終唾液形成に関与している事が示唆された. 2.マウス導管系では介在部、顆粒性導管部で雌雄差があることがわかっていたが、今回の研究により主導管においても雌雄差がある事が明らかになった。上皮はtypeーI,ーII,ーIII,基底細胞より構成されていた。typeーI細胞は、雄のものと類似しているが基底陥入の発達は良い。typeII細胞は非常に電子密度が低い事、遊離リボゾ-ムが豊富な事、封入体を有するペリオキシソ-ムが多い事などが異っていた。typeーIIIは雌にのみ存在していた。脂質を有する顆粒も存在するが数が少ない事から、性ホルモンの影響を調べたが、雄での去勢実験や雌でのテストストロン投与実験でも大きく変動せず、性ホルモンの影響は無い様であった。雄の主導管より雌のものの方が、水分、イオン代謝に関与していると推測された。
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