実験にはウシガエルを用い、脊髄と脳を破壊した後、舌を切ってディッシュ内に固定した。舌から茸状乳頭を切り取り、2mMEGTA液中で10〜15分間、さらに1mg/mlのコラゲナ-ゼとディスパ-ゼの酵素液中で20〜30分間インキュベ-トした後、ピペッテイングにより乳頭内の細胞を単離した。基底側細胞突起と受容膜部を含む細長い先端樹状突起とを持つ細胞を味覚受容細胞と同定した。パッチ電極を単離味細胞にあてて数ギガΩの高低抗接着を得た後、ピペット内に陰圧を加えて細胞膜を破り、whole cell記録を行った。単離味細胞から記録された静止膜電位は-70mV前後で、細胞が損傷されていないことが示された。細胞内を-70mVから脱分極させると-30mVで一過性の内向き電流を生じ、この電流は+10mVで最大となりピ-ク潜時は約6.5mSであった。-10mVから内向き電流に続く遅延外向き電流が発生し、脱分極とともにその振幅は増大した。活性化や時間経過の特徴から、一過性内向き電流は電位依存性Na^+電流であり、遅延外向き電流はK^+電流であると推察された。カエルで記録されたこれらの電位依存性イオン電流は、サンショウウオの単離味細胞から記録されたものと基本的には同様であるが、内向き電流が数nAと大きく、外向き電流が非常に小さいという特徴があった。記録中には先端樹状突起がはがれた場合には、内向き電流が消失し外向き電流のみが残ることから、Na^+チャネルは主として先端樹状突起部に存在すると考えられる。またwhole cell記録を行った後、細胞からピペットを引き離してアウトサイド・アウトパッチを得て単一チャネルの活動を検索した結果、側底膜のパッチから外向きの単一チャネル電流が記録され、電位依存性K^+チャネルが側底部に存在することが判明した。
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