研究概要 |
cAMP,カルシウム,ジアシルグリセロ-ルなど耳下腺のアミラ-ゼ分泌を刺激する細胞内メディエ-タ-は、それぞれcAMP依存性蛋白リン酸化酵素(Aキナ-ゼ)など対応する蛋白リン酸化酵素を活性化し、蛋白リン酸化を亢進することが知られている。しかし、耳下腺ではリン酸化蛋白が分泌に関与している証拠はない。本研究ではcAMPによるアミラ-ゼ分泌に焦点をしぼり蛋白質リン酸化の役割を検討した。得られた結果はおおよそ以下のとおりである。 1.サポニン処理耳下腺細胞を1〜1000μMのcAMPおよびその誘導体とインキュベ-ションし、アミラ-ゼ分泌と21K・26K蛋白のリン酸化の程度を比較した所、両者は大変よく相関した。2.Aキナ-ゼの調節サブユニットにある二ケ所のcAMP結合部位に選択的親和性をもつcAMP誘導体を組合せて培養液に加えた所、単独の効果の和よりも大きな分泌促進が認められた。3.調節サブユニットに結合するが触媒サブニットを遊離しないRpーcAMPS(cAMPアンタゴニスト)をサポニン処理細胞に導入した所、分泌促進は全く見られず、逆にcAMPにより分泌が競合的に阻害された。これらの結果は、アミラ-ゼ分泌過程へのAキナ-ゼの関与を確実なものとした。 対照的に、4.Aキナ-ゼ阻害剤はcAMPによる蛋白リン酸化を著しく抑制したが、アミラ-ゼ分泌はほとんど低下しなかった。5.蛋白質の脱リン酸化酵素を阻害し蛋白リン酸化を亢進する作用をもつオカダ酸は、cAMPによる蛋白リン酸化を増強したが、分泌増強効果は見られず、逆に分泌抑制が認められた。これらの結果は、cAMPによる蛋白リン酸化が低下しても、また、亢進しても、アミラ-ゼ分泌の低下や増強が確認されないことから、蛋白リン酸化とアミラ-ゼ分泌の連関を支持しなかった。Aキナ-ゼに蛋白リン酸化以外の作用があるか否か、大変興味深い。
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