研究概要 |
今回,歯周病原性細菌の主要免疫抗原の解析を中心に研究を進め,多くの結果を得ることができたので,その概要を報告する. 1.B.gingivalis W50,Veillonella parvula ATCC17745 の主要免疫抗原について,103人の歯周疾患患者の血清を用いて Immunoblot 法により検索した。その結果,B.gingivalisの主要免疫抗原は分子量,46_KD_a27_KD_a,14_KD_aの蛋白質抗原であることが明らかとなった。一方,V.parvulaでは39_KD_aの抗原物質が診断上重要であることが示された。 2.若年性歯周炎と深い関係が示唆されているActinobacillus actinomycetemcomitansについて,その抗原性について検討した。本菌の超音波破砕描出抗原には13のメジャ-な蛋白バンドが認められ,そのうち,70_KD_a,40_KD_aの蛋白質抗原に対して,広汎型若年性歯周炎の患者血清は,限局型若年性歯周炎や健常者の血清に比べて,有意に強い抗体反応を示した。この反応は血清の希釈度をあげても変らなかった。一方、29_KD_a抗原に対する反応は限局型若年性歯周炎において抑制されていることが示唆された。 3.加齢が歯周病原性細菌に対する血清I_gG抗体価に与える影響を調べる目的で,各年代の健常者について,7種の歯周病原性細菌に対する血清I_gG抗体価をELISA法により検討した。その結果,B.gingivalis B.loescheii,F.corrodens,F.nucleatunに対する抗体価は,各年代間でほとんど差が認められなかった。しかし,A.actinomycetemcomitans,C.ochracea,B.intermediusの抗体価は,20歳代に比べ,他の年代が低い傾向を示した。 4.本研究を通いて,いくつかの歯周病原性細菌の主要免疫抗原の分子量を明らかにすることができたが,その性状や機能については明らかにされておらず今後の研究課題である。
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