研究概要 |
本研究は,荷重時における義歯床下粘膜の厚さの変化を咬合力計と同期をとることにより,床下粘膜の動的状態の解析可能なシステムの構築を目的としている。 開発したシステム(直接入力システム)は,超音波断層像と咬合力を同時にコンピュ-タに記録可能なものであり,粘膜の厚さを0.1mmの精度で計測可能なものである。 さらに,顎口腔系に異常がなく,口蓋隆起を認めない上下顎無歯顎者60名に,床下粘膜の厚さ計測が可能な上下実験義歯を製作した。また,口蓋隆起を認めない者5名,口蓋隆起が中の者5名,強の者5名に対し,口蓋隆起部(口蓋隆起の認められない場合は口蓋正中部)および切歯乳頭部に0,0.25, 0.50, 0.75, 1.00mmのリリ-フを施して,同様の方法で上下実験義歯を製作した。この実験義歯と超音波画像処理システム(間接入力システム)を用いて,1)最大咬合力下における義歯床支持粘膜の沈下量の計測, 2)口蓋隆起部の適切なリリ-フ量の検討を行なった結果,以下の知見を得た。1.口蓋隆起が認められない被験者において,最大咬合力で噛みしめた場合の粘膜沈下量は,上下顎ともほぼ0.3mm程度であった。2.口蓋隆起が認められない被験者において,各部位の粘膜沈下率は,上顎顎堤部で10.9〜11.8%,口蓋側方部で8.0〜8.9%,口蓋正中部および切歯乳頭右側部で12.7〜151%,下顎顎堤部で16.5〜17.6%であった。3.口蓋隆起が認められない場合でも,口蓋正中部および切歯乳頭部におけるリリ-フの必要性が示唆された。4.口蓋隆起が認められない場合の口蓋正中部および切歯乳頭部におけるリリ-フ量は,0.25mm程度で良いことが示唆された。5.口蓋隆起が中等度のものは0.25〜0.50mm,強度のものは0.50mm程のリリ-フが,同部位に必要であることが示唆された。
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