研究概要 |
純チタン鋳造体を補綴臨床に応用するための基礎研究として,その鋳造性と機械的性質について検討を加えた。 鋳造性に関しては,鋳型温度とスプル-径の影響について,また機械的性質に関しては引張試験と曲げ試験により,鋳型温度や埋没材組成が及ばす影響について金合金やコバルト・クロム合金と比較などを行い検討を加えた。その結果,鋳造性に関しては鋳型温度の及ぼす影響は少なく,各鋳型温度で良好な鋳造性が得られたが,鋳型温度が高くなるにつれ埋没材との焼付きが大きくなり,EPMA分析の結果,鋳造体表層にSiリッチな層が鋳型温度が高くなるにつれて厚く存在することも確認された。また,スプル-径に関しては,スプル-径が2.1mm以上あれば良好な鋳造性が得られた。機械的性質に関しては,鋳造体内部より表層の硬さが大きく,鋳型温度が高くなるにつれ表層の硬化層が大きくなる傾向を示し,Siリッチ層の厚さと硬さ値との間には相関性が認められた。引張試験においては,鋳型温度が高くなるにつれて伸びは減少し,引張強さは大きくなった。曲げ試験においては,チタン鋳造体の曲げ弾性率は金合金TyPeIVに近似した値であったが,コバルト・クロム合金に比較すると低い値であり,変曲点,0.03%耐力,0.2%耐力とも硬化熱処理を行った金合金TyPeIVやコバルト・クロム合金より低い値であった。 また,曲げ特性に及ぼす鋳型温度の影響は,曲げ弾性率において室温鋳型と900℃鋳型間で有意差が認められ,900℃鋳型の方が曲げ弾性率が大きかった。さらに,0.2%耐力において鋳型温度が高くなるにつれて耐力も大きくなる傾向が認められた。
|