研究概要 |
頭頸部癌における細胞動態の測定を目的として、cell cycleにおけるs期の大きさ、growth fraction,さらにはDNA aneuploidyの検索を行なってきた。BrdUrd Labeling indexは、特にin vitroで用いることにより、臨床検体に対して、患者への負担なく有効に増殖動態を測定することが可能であった。さらに、Kiー67抗体および免疫組織学的手法の確立により、臨床検体におけるgrowth fractionの測定を、細胞標識を行なわずに直接行なうことを示した。また、AgNOR染色を、パラフィン切片に試みたところ、細胞核1つあたりの平均dot数は、良性および悪性唾液腺腫瘍の鑑別に有用であることを示した。さらに、化学療法効果との関連についても実験を加えた。フロ-サイトメ-タ-を用いたDNA aneuploidyの検索も行ない、4つのうち、DNA aneuploidyを除く3パラメ-タ-間に相関が認められた。今後の展望として、DNA ploidyに関して、腫瘍組織内におけるheterogeneityを考慮しなくてはならないこと、逆に、増殖細胞のheterogeneityも含め、これらのheterogeneityの細胞の癌化および進展における役割について興味がもたれた。さらには、これらの種々の細胞動態を反映するパラメ-タ-と遺伝子あるいは染色体の変化との関連を調べていくことは、さらに癌細胞の特性が解明され、効果的な治療を行なうために貢献できるのではないかと考えている。現在我々は、個のの細胞レベルで、fluorescence in situ hybridization(FISH)の手法を用いて、染色体の数および質的な異常(polysomy,deletion)を調べ、それらの異常が細胞増殖にどのように関係しているかについての実験に着手している。
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