研究概要 |
テトロン酸基を金属イオン捕捉の酸性基にもつポリエ-テル・イオノフォア抗生物質として,テトロノマイシンとテトロナシンがあり,それぞれスイス・サンド社及び英国ICI社により1980年代始めに発見されたものである。本研究は両者の全合成を目的として設定したもので,最終年度においてテトロノマイシンの初の全合成を達成することができた。 1.ポリエ-テル部の合成: 両抗生物質の含酸素ヘテロ環部(テトラヒドロフラン及びテトラヒドロピラン部)を,レ-ラムノ-ス及びレ-アスコルビン酸より調製し,それらの結合によって正しい立体配置のポリエ-テル部を構築した。 2.シクロヘキサン部の合成: 本系化合物に特有な,4連続不斉中心をもつシクロヘキサン部を3ーメトキンー5ーメチル安息香酸を出発原料として合成した。又,中間体の酵素化学的光学分割により,テトロノマイシンとテトロナシンの合成に供しうる両エナンチオマ-を調製することができた。さらに,行程短縮による効率化を図るため,1,7ーヘプタジエンー1,7ージカルボン酸エステルの還元的分子内閉環反応を研究し,Lーセレクトライドを用いる方法を確立した。 3.テトロノマイシンの合成: 末端に酢酸エステル基をもつポリエ-テル部とシクロヘキサン・アルデヒド部をアルド-ル反応によって連結,ついで脱水と共役二重結合の光異性化を施し3環システムを構築した。最後にαーメチレンーβーテトロネ-トとの縮合,保護基の除去を経てテトロノマイシンのナトリウム塩を得た。
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