研究概要 |
数種の生物活性天然物群の合成を行うにあたって、共通のビルディングブロックを両対掌体とも同様の容易さで合成し得ることは、目的とする天然物類の効率の良い合成法を提供することのみならず、生物活性発現のメカニズムの解明に、資料を供給する点で貢献し得る。この考えの基に、著者は、数種の合成素子を分子設計するとともに、これらを不斉合成し得る反応系ならびにその基質を設計し、目的とする合成素子類を不斉構築するとともに、得られたこれらより種々の天然物への変換を行なった。以下にその概略を述べる。 1)ピペリジン及びピロリドン体の不斉構築とその利用 数種のインド-ルアルカロイドの不斉合成素子として、3,4位に官能基を備えたピペリジン及びピロリジン体を、又これらを分子内不斉Michael反応で合成し得る基質として鎖状化合物を設計した。この鎖状化合物を不斉アシンであるトフェニルエチルアシンを用い、環化反応を行なった所、ピペリジン体及びピロリドン体を、各々90%ee及び60%eeで得ることができた。次に得られたピペリジン体を再結晶し、光学純度を98%以上まで高めるとともに、これより(-)ーajmalicine,(-)ーtetrahydroalstonine,(+)ーyohimbineへの変換に成功した。 2)ピロリジン体の不斉構築とその利用 数種のピロリチジンアルカロイドの不斉合成素子として、3位の水酸基2位に官能基を備えたピロリジン体を設計し、これをSharpless不斉酸化、オキサゾリジノン体の形成、ついで分子内環化を経て約80%eeで合成した。ヌバルジシンやカルバペネム類の不斉合成素子として、3位に水酸基、2,5位に官能基を備えたピロリジン体を設計し、同様の方法で不斉合成を行なった。現在これらのピロリジン体から種々の天然物への変換を行なっている。
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