研究概要 |
海綿の構成成分6ーiminoー1,9ーdimethylー8ーoxopurine (I)やイソギンチャクの構成成分caissarone(塩酸塩をIIで示す)は,天然プリン類としては珍しい8ーoxo構造を有しているので,これらの生物活性には興味が持たれる.これらの8ーオキソプリン類の化学合成は未検討であったので,本研究ではI及びIIを次のようにして合成し,それらの化学的性質を調べることができた. 1.9ーMethyladenine(III)を臭素化し,得られた8ーBr体(IV)をMeIでメチル化すると8ーlromoー1,9ーdimethyladesine(V)が得られた.Vを沸騰酢酸中NaOAcで処理すると,標的化合物IがIIIからの通算収率25%で得られた.別法では,IVを1NNaOH水溶液中で煮沸し,生成した9ーmethylー8ーoxoadenineをMelでメチル化したところ,IIIからの通算収率63%でIを合成することができた. 2.このようにして得たIは,1NNaOH水溶液中で煮沸すると,Dimroth転位を起してN___ー^6,9ーdimethylー8ーoxoadenine(VI)を与えた.Vも同様のDimroth転位を起すことが判明した.これらの転位の容易さを,1,9ーdimethyladenine(VII)を基準化合物に用いて反応速度論的に比較したところ,pH7.00ー11.42,40℃,イオン強度1.0ではV>VII>Iの順で転位が遅くなることが判明した. 3.VIをMel/AcNMe_2でメチル化したところ,3ーMe体・HI塩(VIII)(収率50%)及び1ーMe体・HI塩(13%)が得られた.次に,VIIIの水溶液をAmberlite IRAー402(Cl^-)カラムに通すことによって,他の標的化合物IIを98%の収率で得た.ここに得られたIIは,天然caissarone塩酸塩と同定することができた.この結果,IIIから6工程,通算収率28%によるIIの合成経路を確立することができた.
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