研究概要 |
南米産矢毒蛙の皮膚抽出物中には200種を越えるアルカロイドが含まれており,これらは神経毒性などの顕著な時異的生理作用を示す.これらのアルカロイドは純粋物質が天然より極微量しか得られないため,化学合成による試料供給が強く望まれている. 以上の観点から,著者らはこれまで失毒蛙アルカロイドのキラル合成を行ってきているが,本研究は,これらの研究の一環として行ったものである. 本研究の標的化合物としては,インドリチジン型アルカロイド(平成元年度),プミリオトキシンC(平成2年度)を選び,新規な手法によるこれら失毒蛙アルカロイドのキラル全合成の達成を目的とした.すなわち,平成元年度においては,(+)-シトロネロ-ルより出発してキラルなヒドロキサム酸を合成し,これを過ヨウ素酸塩で酸化して生成するNーアシルニトロソ化合物の分子内ディ-ルス-アルダ-反応によりオキサジノラクタム体とした,本化合物の立体選択的アルキル側鎖導入を経て所期の目的としたインドリチジン205A,207A,209B,235B(いずれも(-)-エナンチオマ-)のキラル全合成を達成することができた. さらに,平成2年度においては,Lーグルタミン酸より9工程で得られるヒドロキサム酸を用いて分子内ディ-ルス-アルダ-反応を行いオキサジノラクタム体とした.次いで,本化合物に立体選択的アルキル側鎖導入及び塩基による閉環を行ってデカヒドロキノリン環の立体選択的構築に成功した.目的とした(-)-プミリオトキシンCの合成は脱オキソ化の工程を残すのみとなり,所期の目的をほぼ達成することができた.
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