研究概要 |
核酸一蛋白質の相互作用様式にはすでにいくつかのモチ-フが知られているが,今回,新規なモチ-フと考えられる系の認識機構を原子レベルでの構造を明らかにする。(1)ヒストン分子には球状に折れたたまれずに,鎖状に突出している領域があり,これがDNA2重らせん構造に結合し,核酸の高次構造変化をもたらすとが考えられる。この領域ではセリン-プロリンーリジンーリジンのアミノ酸配列がタンデムに存在している。配列からβーturn構造をとり核酸のりん酸部位と結合するモチ-フが考えられる。この新規モチ-フは,塩基配列認識の特異性が小さく,核酸高次構造の変化(折れ曲がり)を起こすことに生物学的意義がある。P.angulosus H1のN末端部位のアミノ酸配列をもつ4種のオリゴペプタイドを化学合成した(神戸学院大学薬学部岡田芳雄教授との共同研究)。これと2重らせん鎖で分子中央部分にアデニン(-チミン)クラスタ-をもついくつかのDNAオリゴヌクレオチドとの複合体結晶の作成を行った。現在のところ球状結晶がえられるのみで,X線構造解析を行える良好な結晶を得るには至っていない。 (2)核酸に塩基配列特異性結合をする抗生物質クロモマイシンとオリゴヌクレオチドとの相互作用:NMR測定によって得られた構造情報と構造化学情報に基ずいて,複合体モデルを作成した。得られた構造モデルは薬物の核酸塩基配列特異性を良く説明でき,また核酸分子のマイナ-溝で広範囲な疎水結合を形成する新規なものであった(これは大阪大学蛋白質研究所京極好正教授との共同研究である)。(3)核酸分子の蛋白質などとの相互作用様式を構造化学的に表現する構造パラメ-タの検討,また計算,表示するプログラムパッケイジを作成した。このプログラムは分子動力学計算での構造変化をシミュレ-トする有用な機能をもつ。
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