研究概要 |
本研究では,ブタ・マウス,モルモット肺からカルボニル還元酵素を精製し,その構造・機能特性,分布および活性調節について検討することによって,肺に特異な異物および生体内カルボニル化合物の代謝における本酵素の役割に関する以下の知見を明らかにした。 1.構造特性・肺のカルボニル還元酵素は分子量24.000サブユニットから成るホモ4量体であった。本酵素の抗体をプロ-ブとして,ブタ肺cDNAライブラリ-から本酵素のcDNAクロ-ンを単離し,その塩基配列を決定した。推定アミノ酸配列は精製酵素の部分的結果と一致し,また多くのピリジンヌクレオチド依存性脱水素酵素の補酵素結合ドメインに類似する領域を有していた。化学修飾により活性中心にリジンとヒスチジン残基が存在することが示唆された。 2.機能特性・本酵素は脂紡アルデヒドや3ーケトステロイドを含む種々のカルボニル化合物を還元し,アルデヒドをカルボン酸へ酸化した.免疫学組織化学的に本酵素はこれらの動物肺のクララ細胞,繊毛細胞およびII型肺胞細胞に局在することを明らかにした。これらの結果から,本酵素は,薬物代謝とともに、生理的には脂質過酸から生じるカルボニル化合物の除去,ステロイド代謝,エ-テル脂質の生合成に関与することが示唆された。 3.活性調節。本酵素はカルボニル基質に対して負の協同性を示すアロステリック酵素であった。脂肪酸はこのホモトロピック阻害を脱感作するアロステリックな調節因子であり,このうちシス型不飽和脂肪酸が2.2〜14μMのKa値を示す最も効果的な活性化剤であった。脂肪酸による活性調節は本酵素が関与するエテ-ル脂質の生合成に重要であり,また低いKa値から肺に特異な脂肪酸結合タンパクとしての本酵素の機能も示唆された。
|