研究概要 |
血中過酸化脂質の増加はLDL酸化変性を惹起し、細胞内に取り込まれてcholesterol estrase(血液由来ChEを分解するlysosomal酸性ChEaseや細胞内因性ChEを分解するmicrosomal中性ChEase)活性へ抑制的に作用し、macrophage泡沫化や動脈壁細胞内ChE蓄積につながり、粥状動脈硬化成因の一つとなる可能性を動物実験と細胞培養実験により検討した。 I.動物実験:ラット各群10匹の4群(1)Linoleate hydroperoxide(LHPO)投与 (2)LHPO+vit.E投与 (3)リノ-ル酸(LA)投与 (4)普通食のみについて8週間飼育した。血中や肝のTBA値はLHPO投与群で有意に最も高く、又血中過酸化物に曝されている単核球と胸腹部大動脈の酸性・中性両ChEase活性低下が見られた。特に大動脈では中性ChEase活性低下が顕著(普通食群活性の13%)であった。LHPO投与群のLDLは共役ジエン含量及びTBA値が普通食群の約6倍高値で、電気陰性度の増加と立体構造の変化を伴う酸化変性LDLの生成を示し、これはin vitroで普通食群の大動脈,単核球,肝の酸性・中性ChEase活性へ抑制作用を示した。vit.E投与群は過酸化脂質のこれら諸作用に対して保護効果を示した。II.細胞培養実験:タバコ煙抽出物で調製した酸化変性LDL(CSーLDL),高脂血症IIb型血清と正常血清から分離したHCーLDLやNーLDLの電気陰性度の強度がCSーLDL,HCーLDLの順に強い事を確認後、^<125>Iで標識し、正常ヒト単核球の培養培地へ添加すると、結合量と取り込み量はNーLDLが最も低く、HCーLDL,CSーLDLの順で増加したが、分解量はその逆の順序であり、酸化変性LDL中のラジカルによるApo蛋白分解酵素活性阻害がみられた。又、酸性・中性両ChEase活性も添加量100μg/mlでは50μg/mlでの各々の最大活性の約1/2へ低下し阻害作用が見られた。本研究の結果から、単核球や大動脈のChEaseに対する血中過酸化変性LDLを介した阻害作用は、動脈壁macrophage泡沫化を促進し、粥状動脈硬化成立因子の一つになる事が示唆された。
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