研究概要 |
本年度の大きな研究実績はポタシウムチャンネルオ-プナ-(K^+-channel opener)と一括して呼ばれている薬物(nicorandil,pinacidil,cromakalim)の作用様態が、作用する血管の部位によって異なるということが、特異的なK^+-channel openerの薬理学的拮抗薬であるglibenclamideによって明らかになったことである。すなわち、実験はイヌの摘出冠動脈の太い部分(左回旋枝)のリング標本を栄養液中に懸垂して、その張力の変化を測定した。トロンボキサン様物算U46619、Kclで収縮させた冠動脈をNicorandil、pinacidil、cromakalimは拡張させた。glibenclamideの処置によって、Cromakalimの濃度作用曲線は、平行に右方に移動した。schild plotからpA_2は7.47で傾きは1であり、薬理学的拮抗を示した。pinacidilの拡張作用もglibenclamideによって抑制され、PA_2値は7.93であったが傾きは0.59であった。一方、K^+-channel openerであるnicorandilの血管拡張作用は、glibenclamideによって全く、抑制されなかった。この点において、K-Channel openerといわれる薬の作用様態に大きな違いがあることが判明した。nicorandilの血管作用のメカニズムは、guanylate cyclaseの阻害薬であるmethylene blreによって抑制されることから、C-GMPの上昇を介するNitroglycerin様のメカニズムであることが明らかとなった。一方、冠動脈血管床のcromakalim、nicorandilによる血流増加作用は、glibenclamideによって同程度に明確に抑制された。このことは血管の部位、太い動脈、細い動脈において、血管拡張作用が異なることを示唆する。今後の課題は細い血管、心筋等で明確にK-channel openerとして作用するのに、太い冠動脈ではK^+-Channel openerとして、なぜnicorandilが作用しないのかを解明する課題が残された。
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