研究概要 |
高齢化にともない、老人医療の重要性が大きな社会問題を投げかけている。老化に伴う形態学的、生理学的および生化学的変化ないし変動による生体の機能低下、ことに中枢神経系の機能低下に基因する精神障害時における脳代謝賦活薬と向精神薬の併用はしばしば用いられている。しかしながら、加齢状態におけるこれら薬物の中枢神経系への併用効果についての薬理作用は必ずしも明確にされているとは言い難い。 実験には、SD系雄性ラットの若齢(8ー9週齢)および加齢動物(26ー30月齢)のものを用いた。脳循環障害動物の作成は、麻酔下で左総頚動脈を結紮し、術後7日を経過した一般状態の健常な動物を用いた。行動観察は、一般症状のほか、自発運動、協調運動を行った。さらに、中枢神経系の生理的活動を把握するため、脊髄反射(M.S.RおよびP.S.R)電位を、なお、椎骨動脈の血流量を測定した。1.一般症状および自発運動:総頚動脈結紮により探索行動の抑制、回避行動の抑制、鎮静化がみられ、自発運動量の減少が認められた。MF,CPZ単独群では、これらの減少に影響をおよぼさなかったが、MF+CPZ併用群では、探索行動の活発化による自発運動量の増加および眼瞼下垂の軽減がみられた。2.協調運動:総頚動脈越紮により両群とも協調運動の低下とその持続がみられた。しかしMF,CPZの各単独群では、これらの現象に影響を及ぼさなかった。一方、MF+CPZの併用により若齢群では協調運動は回復を示した。3.脊髄反射活動電位:総頚動脈結紮により活動電位の電位低下がみられた。MF,CPZの各単独群では影響を及ぼさなかったが、MF+CPZの併用により活動電位の回復傾向がみられた。回復は8〜9週齢群の方が速やかであった(p〈0.01〉。4.椎骨動脈の血流量:総頚動脈結紮により血流量の増加傾向がみられ、この傾向は8〜9週齢群で強かった。M,CPZの各単独群では、血流量の増加に影響を及ぼさなかったが、MF+CPZでは血流量が有意に増加した。
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