研究概要 |
グルタミン酸の立体配座を固定した化合物αー(carboxycyclopropyl)glycine(CCG)の8つの異性体を合成し、新たに強力な代謝調節型グルタミン酸受容体アゴニスト(2S,3S,4S異性体、LーCCGーI)およびNMDAより強力なNMDA型アゴニスト(2S,3R,4S異性体、LーCCGーIV)を開発した。CCG異性体のNMDA型アゴニストLーCCGーIVは、培養ラット海馬神経細胞において、カルシウムの取り込みが、NMDAよりも100倍以上強力であり、興奮性アミノ酸による神経細胞死の機序解明のための強力なツ-ルとなることを示した。またLーCCGーIはXenopus卵母細胞においてchloride依存性のoscillatory responseを誘発し、ラット海馬神経細胞ではイノシト-ル燐酸の代謝回転を著しく促進し、強力な代謝調節型グルタミン酸アゴニストであることがわかった。更に強力な興奮性アミノ酸であるアクロメリン酸を神経科学の分野に導入し、既存の興奮性アミノ酸の中で最も強力であることを示した。アクロメリン酸の皮下注射により、ラットに半永続的な強直性対麻痺を起させ、これが抑制性介在ニュ-ロンと思われる脊髄下部の小さな神経細胞の脱落によることを示した。ドウモイ酸の中毒患者では老齢であるほど痴呆になる率が高いことから、このようなカイノイドの作用解析を更に押し進める必要がある。アクロメリン酸を動脈内に持続的注入することにより脊髄運動神経細胞を選択的に破壊させることに成功した。この方法によってアクロメリン酸を適用したラットの脊髄病理像が、ヒトの筋萎縮性側索硬化症に似ていることがわかった。
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